保険医の生活と権利を守り、国民の医療と健康の確保を図る

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活動報告

 

第39回岩手県保険医協会定期総会アピール

 時代は動き、人が動き、被災の傷は時の流れとともに治癒していくものと期待されていました。しかし、またも地は動き、被災地の人々は世の無常迅速の淵に沈みました。東日本大震災の5年経過を待っていたかのように、この度は熊本地震が先月襲来したのです。東日本大震災の爪痕はいまだ癒しがたく、復興完遂への名状しがたい疑心から、避難したまま戻らない人、あるいは戻れない人、去りゆく人が、後を絶ちません。熊本地震も決して他人事ではなく、当協会としても極力支援に協力していきます。


 さて、昨今の世界の情勢をみますと、貧富の格差がますます拡大しています。上位62人の総資産は、下位50%の36億の人々のそれに匹敵するといわれ、IS(イスラム国)の跋扈に伴うテロなどの社会不安を助長しています。国内では、いわゆる貧困格差に多数の人々が喘いでおり、6人に1人の子どもが相対的貧困の状況に置かれ、年収200万円以下の労働者が1100万人(17%)、非正規労働者は2000万人(38%)を超えています。


  協会・医会、保団連による2015年受診実態調査の中間集計がでました。主に患者の経済的理由からと思われる治療中断の経験があるのは全体の約4割で、医科の約3割、歯科の約5割でありました。この半年間の患者一部負担金の未収金は約半数が経験し、全額回収できたのはそのうち3割程度でありました。患者の経済状態は、医院経営にも影響を及ぼします。強者は傍観を止め、弱者は隠忍を排するべきです。貧困と貧乏を峻別し、富の再配分の是正により貧困を撤廃すべく、政府の真の成案を熱望します。


  この度の診療報酬改定は、本体こそ微増となりましたが、全体では1.44%のマイナスでした。施設基準の強化が如実であり、医療機関への締め付けがまたも厳しいものでした。さらに、「地域包括ケア」の美名のもと、退院患者の受け皿となる在宅医療や施設が未整備のまま、入院日数の短縮化が図られています。国の責任を都道府県に押し付ける性急な手法は、医療全体の崩壊を招く危惧があります。


  また、国民への情報を厳しく制限する特定秘密保護法や、いつでも集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法が施行されました。そして、福島第一原発事故の検証は不十分のまま、川内、高浜と原発再稼働が強行されました。国を守る、国を富ますとは言っても、責任不在の姿勢しか見えてきません。


 TPPについては、今後も注視が必要です。発効されると、医療の民営化が促進されて国民皆保険制度が形骸化し、薬価制度の見直しによる薬価の高騰が起こります。患者への医療の恩恵を大幅に制限されるのは自明とされています。


  一方、県内では、東日本大震災の被災者の国保と後期高齢者の窓口負担免除が、さらに1年継続されることになりました。当協会が震災後毎年行ってきた被災者医療費アンケートに記された被災者の声も、県政を動かした一因です。医療費助成制度においても、大きな動きがありました。東北で唯一償還払いであった当県でも、本年8月から、就学前までの現物給付が実現するのです。各市町村議会から県への請願採択に長年にわたって働きかけ、「子どもの医療費助成拡充を求める岩手の会」に全面協調した成果です。今後の課題は、中学卒業まで現物給付で窓口負担を無料化することです。


  このような情勢のもと、岩手県保険医協会は、人々が安心して生活できる平和な社会を築いていくため、保険医の使命と医療団体の責任を持して、他団体とも協力しつつ、一層の努力をしていく所存であります。



 第39回定期総会にあたり、この決意を表明するものであります。

2016年5月29日
第38回岩手県保険医協会定期総会

第38回岩手県保険医協会定期総会アピール

 本来の政治の要諦ということに思いを致すとき、まず国民の生命・財産を守ることでありましょうが、さらに期待し要求していいことがあります。それは、いかなる場合でも公平性の追求にあり、経済成長が縮小しても大多数の人が納得できる分配政策を実行することであります。


 東日本大震災からすでに4年余、復旧・復興が遅々として進みません。21世紀のグローバリゼーションがもたらした不景気と時期が重なって、被災者の不運・不幸の上塗りをしてしまっているとはいえ、被災県の住民として心が痛みます。


  当県の場合、本年3月末の時点で、27,573名もの方々が仮設住宅生活を余儀なくされています。うつ病を発生させ、災害関連死が絶えないストレスフルな仮設という状態は、余りに苛酷です。そのような中で、当協会も行ってきた要請の部分的成果ではありますが、国保と後期高齢者の窓口負担免除の継続は一縷の光明となりました。


  福島第一原発事故の放射性物質の影響を過小評価する姿勢を崩さない政府に対して、国内外から不安や疑問の声が上がっています。原発周辺住民の安全対策が不十分なまま再稼働させる政治姿勢は、経済優先の誹りを免れません。今回の原発事故は、資本主義の帰趨として、経済成長を追及し続けることができる時代が終りかけていることを、われわれに明示しました。広範な地域の住民が長期的に浴び続ける低線量被ばくや、患者が医療で浴びる一時的被ばくの、健康に及ぼす影響についての関心も高まっています。


  さて、最近の安倍政権と自民党の横暴さと勝手さは、目に余るものがあります。憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認と安保法制の拡大。知る権利を制限し、民主社会の基礎である自由な情報の流通を妨げる、特定秘密保護法の制定。震災復興への怠慢。貧富の格差の拡大放置。昨年末の衆議院選挙、4月の統一地方選と圧勝したことによる傲慢な国会運営。憲法13条の幸福追求権も、25条の生存権も、種々の基本的人権が、危機に瀕しているといえます。


 そして、入院患者の負担増や国保の都道府県化、新たな混合診療制度の創設などが盛り込まれた医療保険制度改革関連法案が、今通常国会で成立しました。極めて短い審議時間であったため、内容が知られていない、患者の声を聞いていない、との不満があるとともに、患者の生活が成り立たなくなり、地域医療が崩壊するという危惧もあります。この度の如く、重要事案を一括し、審議不十分のままに国民のいのちと健康に関わる法案を成立させるやり方に、当協会は強く抗議してまいりました。


  今年は戦後70年です。先の大戦で、300万人の日本人、2,000万人以上ともいわれるアジアの人々の尊い命が失われました。改めて、不戦の誓いを胸に刻むものです。平和とは何かと考える時、震災や原発事故の被災者のことを思わずにはいられません。被災者の方々は、現在戦争に関わっているわけではありませんが、平和を満喫しているわけでもありません。心の平安が約束されてこそ、真の平和です。しかし、これまで復興事業の全額を国が負担していたものを、政府は2016年度以降の分の一部で地元負担を求める方針を決めました。被災自治体は復興体制の長期化に疲弊しています。さも思惑有りげな「地方創生」を唱える前に、苦境に立つ人々が希望を持てる政策を示すべきです。


  このような情勢のもと、岩手県保険医協会は、人々が安心して生活できる平和な社会を築いていくため、保険医の使命と医療団体の責任を持して、他団体とも協力しつつ、一層の努力をしてく所存であります。



 第38回定期総会にあたり、この決意を表明するものであります。

2015年6月14日
第38回岩手県保険医協会定期総会

【声明】
参議院本会議において、患者、国民の声を無視して、
医療保険制度改革関連法を可決、成立させたことに強く抗議する

 2015年5月27日、参議院本会議において、医療保険制度改革関連法が自民・公明などの賛成多数によって可決、成立されました。本法は、医療・介護総合法と同様に、国民健康保険法、健康保険法、高齢者医療確保法などの重要な法「改正」が一括して提案されましたが、患者、国民から再三にわたり「審議を尽くせ」の声が寄せられたにもかかわらず、衆議院、参議院合わせてわずか37時間(参考人質疑を除く)の審議で可決、成立させたこと、一つ一つ徹底した審議が必要な法「改正」を一括し、国民にその内容を知らせることなく短時間で成立させてしまう手法は、議会民主制や国会審議を蔑ろにするものであり、強く抗議します。

 法案の中身についても、わずかな審議時間ながら、与野党を問わず、「経済的に厳しい患者さんが、食事代の自己負担額があがることによって、入院を断念し、重篤化してしまわないか。」「患者申出療養制度に関し、6週間でどのように安全性・有効性を確保するのか、将来的に保険収載に本当につながるのか」等、次々と懸念する点が出されましたが、こうした懸念に対し、政府は正面から答えず、「詳細は法案成立後に審議会等でつめる」との答弁を繰り返しました。

 参議院参考人質疑では、患者団体から「患者や家族の声、生活実態を把握した上での議論なのか」との意見が出されているにもかかわらず、審議不十分での法案成立手法をみるに、政府が、患者さんや国民の困難な状況、切実な声を把握しているとは到底思えません。このような政府の姿勢に、私たちは断固抗議するとともに、命と健康を守る医師・歯科医師として、引き続き、患者さん、国民とともに、誰もが安心して受けられる医療を守る運動に全力を尽くします。

 

2015年5月28日

岩手県保険医協会
会長 南部 淑文

参議院本会議において、患者、国民の声を無視して、医療保険制度改革関連法を可決、成立させたことに強く抗議する(PDF形式)

 

【声明】
衆議院厚生労働委員会において、患者、国民の声を無視して
「医療保険制度改革関連法案」の採決を強行したことに強く抗議する

 政府は、4月24日、医療保険制度改革関連法案(「持続可能な医療保険制度等を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」)の衆議院厚生労働委員会での採決を強行しました。同法案は、国民健康保険法、健康保険法、高齢者医療確保法などを一括して提案し、内容も

@経済的困難を抱えている患者、国民をさらに追い込む負担増計画

A安全性、有効性が未確定な医療を「患者の自己責任」の名で広げる患者申出療養の創設

B都道府県に公的医療費削減の役割を担わせる「国保の都道府県単位化」(都道府県による財政運営、医療費適正化
  計画の「見直し」など)

など、国民生活に重大な影響を与える問題が数多く含まれています。

 しかも、14日(火)に衆議院本会議で趣旨説明、17日(金)から委員会での審議が本格的に始まったばかりで、充分な審議はなされていません。委員会審議の中で出された「患者申出療養は安全性、有効性の担保がない」「国保の都道府県化によっても高すぎる保険料の問題は解決しない」などの懸念に対し、政府は「詳細はこれから検討する」など、具体的なことは何も答弁していません。不十分なところがありながらも、国民の健康と命を50年以上に渡って守ってきた国民皆保険制度の根本を揺るがす政策であるにも関わらず、社会的強者の一方的な理論のみが先行し、経済的に厳しい患者や国民の視点に立った議論が深められていないことに、強い憤りを感じます。

 当会には、「患者負担増や保険のきかない医療を広げる計画はやめてほしい」との請願署名が続々と届けられており、全国では20万筆を超えております。こうした多くの患者、国民の声を無視し、十分な審議もつくさずに厚生労働委員会での採決を強行したことは、議会制民主主義を否定するものであり、断じて許されません。 私たちは、強く抗議するとともに、衆議院本会議での採決を強行せず、あらためて厚生労働委員会での審議をやりなおし、廃案にすることを求めます。

 

2015年4月27日

岩手県保険医協会
会長 南部 淑文

医療保険制度改革関連法案に対する声明(PDF形式)

 

2015年 年頭所感

 新年明けましておめでとうございます。

 私は、昨年6月の総会におきまして、箱石前会長の後任を仰せ付かりました。常任理事15年の後、副会長を一期務めました。今次歯科医として初の会長就任は、当協会の磐石さと医歯一体振りの証であります。一方、責任の重大さも殊更痛感しております。

 

 あの東日本大震災から4度目の冬を迎えました。被災地の皆様への、特に医療政策上での支援は、今後も継続することを先ずはご了承願います。

 さて、日本はここ10年で、格差や貧困問題が深刻になっています。米国では、「オバマケア」なる新医療制度が民間保険の跳梁を許しています。延いては、患者が自ら薬の量を減らしたり受診を控えたりする事態は重症化しており、私達保険医にとっても決して対岸の火事ではありません。

 岩手県保険医協会 会長 南部 淑文

 山積する諸問題に接する時、信条を優先する迂遠な「価値合理的」ではなく、結果を得る為に最も適切な手段を講ずる「目的合理的」な姿勢こそ、近年の沈滞した時代・医療情勢への対応と、決意を新たにしております。

 

 当協会も設立して37年、会員増は年来の悲願であります。ご子弟はもとより友人・知己等を、是非ご紹介頂きたく存じます。必ずやご期待に添うものと信じております。

 

 何卒、本年も引き続きご支援とご協力をお願い申し上げます。

 
 

岩手県保険医協会
会長 南部 淑文

 

十分な審議もなく、医療・介護総合法を可決、成立させたことに強く抗議する抗議声明

 6月18日、参議院本会議において、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(以下、医療・介護総合法)が、自民・公明両党の賛成多数で可決、成立した。

 参議院本会議では全野党が反対し、討論においては、19本もの重要法案が一括されたことなどに対し、「国会軽視の暴挙」「国会の審議権を奪うもので、立法府の責任が果せない」と強く抗議する意見が相次いだ。

 また、私たちはこの間「徹底した審議を」と繰り返し要請してきたが、結局、参考人質疑や公聴会をのぞくと、衆議院で28時間、参議院で27時間しか審議が行われず、衆参両院の委員会採決時には、全野党から審議継続の要求が出されたにもかかわらず、採決が強行された。

こうしたあまりにも乱暴な国会運営は、議会制民主主義を破壊し、国民の国会に対する信頼を失墜させるものである。断固抗議するとともに、このような手法で成立した医療・介護総合法は、少なくとも徹底した審議をやり直すべきである。

そもそも医療・介護総合法は、社会保障について「自助・自立」を第一として国の責任を放棄し、効率化の名の下に患者を入院から在宅へ、施設から地域へと押し出して、安上がりの医療・介護を国民に押し付ける内容となっている。同法に則って行われる施策により、医療難民・介護難民がさらに生み出されるとの強い懸念が国民各層に広がっている。上からの強権的な医療提供体制の再編、介護保険の給付減・負担増など、このまま同法の具体化が推し進められれば、患者・県民は地域で安心して暮らすことができなくなる。

一方、医療・介護総合法は成立したが、施行にあたっての政省令、ガイドライン、各種計画などの策定はこれからである。県民のいのちと健康を守る医師・歯科医師として、私たちは引き続き地域医療の現場から声を上げ、医療現場の実態を反映させる取り組みを、患者・県民とともに強めていく。

 今回の政府の挙に強く抗議する。

 

2014年7月15日

岩手県保険医協会 理事会

十分な審議もなく、医療・介護総合法を可決、
成立させたことに強く抗議する抗議声明(PDF形式)

 

第37回岩手県保険医協会定期総会アピール

 人は希望を抱いて生きています。希望の為に生きているのではありません。達成が嬉しいというより、成就に一歩でも近付く実感が新たな希望への励みになるのです。国民の謙抑な願望を無視する、あるいは、質実な生活に要する最低限の制度を縮小・廃止する政策を捨て、今こそ希望の政治に参加すべきです。


東日本大震災発生から3年を経た現在も、仮設住宅入居率は8割を超えています。生活再建への道は依然として険しく、資材の高騰や人手不足が復興の足枷となっています。その地での確固たる展望を見出せない住民の流出は、深刻な状況を如実に表しています。


  政府は今国会に、介護保険と医療提供体制の見直しを盛り込んだ地域医療・介護総合確保推進法案(「医療・介護総合法案」)を提出しました。医療の分野では、2025年に向けて必要とされる202万床に対し、159万床に削減することが計画されています。そのため、病床を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の四つの区分に再編する「地域医療ビジョン」を都道府県に策定させ、従わない医療機関にはペナルティを科すという内容です。介護の分野では、「地域包括ケアシステム」が導入され、介護利用料の引き上げ、要支援1・2の訪問・通所介護の保険外し、特別養護老人ホームの入所要件を要介護3以上にすることなどが画策されております。すでに2018年には介護療養病床が廃止されることから、行き場を失う患者が多数出ることになります。その他、先進医療を担うとされる「臨床研究中核病院」の創設、外国人医師・歯科医師への規制緩和や「医療事故調査」の法制化等も入っています。医療費抑制の名目の下に、生活破壊や医療破壊に拍車をかける制度上の大幅な締め付けは、国民全体に筆舌に尽くしがたい生きにくさを齎しています。慎重かつ厳密な審議を、ひいては廃案を望むものです。


  今次も、診療報酬改定は医療機関を直撃しました。同一建物居住者の診療報酬が在宅診療不適切事例を理由に大幅に引き下げられ、介護現場に混乱が生じています。盛り込まれたとする「損税」補填は、不十分かつ不明朗で、医療機関の負担が益々重くなっています。


  「特定秘密保護法」が昨年12月に成立し、公布されました。特定秘密を扱う公務員の適性評価は運用次第でプライバシーの保護や思想・信条の自由に触れる可能性があり、医療現場への影響も看過できません。


国民の不安の声も多数聞かれるなか、安倍首相は憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認を急いでいます。人命を守る医師・歯科医師の団体として、戦争に国民の生命をさらす恐れのある行使には、深い懸念を覚えます。


  リーマン・ショックは金融工学への疑念を、福島第一原発事故は原子力工学の限界を、人々に感じさせました。しかし、新自由主義は相変わらず跋扈し、政府は今後も原発依存を続行する方針を明言しています。先進国をかつては潤した資本主義の残照に縋って存するわれわれは、経済優先よりも格差が是正された安全安心の生活を求めることこそ、国民的矜持の源とすべきです。


  このような現状に対し、岩手県保険医協会は、すべての国民が安心して生活できる平和な社会を築いていくため、一層の努力をしていく所存であります。



 第37回定期総会にあたり、この決意を表明するものであります。

2014年6月15日
第37回岩手県保険医協会定期総会

第36回定期総会アピール

 爾来2年有余、本協会は右手に「医療の充実」を、左手には「復旧・復興」を掲げてまいりました。東日本大震災に被災された方々は、人知を越えた運命に屈することなく、その地の再起と生活再建のために尽力し続けています。


  この間のわれわれの活動は未来の検証に耐え得るとしても、回復の実状を見聞きする時、必ずしも怯むものなしとはしません。今後も特に被災地の医療について大きな関心を払っていくことは、本年4月からの会費徴収の再開を応諾して下さった会員の皆様に対する当然の使命であります。


  本協会ではこれまで二度の被災者アンケートを行ない、延べ5,674通もの回答を頂きました。多数の方々が医療費免除措置の継続・復活を切望しており、最も手近で目に見える助成としてそれに応えることが、国の喫緊の責務であります。


  さて、さきの総選挙により民主党は瓦解し、自公政権へと回帰しました。得票率と議席数の乖離が杞憂ではないことを示唆するかのごとく、新政権の矢継ぎ早の政策は決してわれわれの目指すものと軌を一にするものではありません。


  まず、憲法改定の動きが活発です。直前に迫った参院選の結果次第では、現憲法の最大の危機を迎えることになります。権力の制限と拘束をその本質とすることが守られているか、9条の平和の理念をはじめとして、厳しく見定める必要があります。


  政府は、生活保護の生活扶助基準額を最大10%引き下げることを決めました。医療扶助の削減も含んでおり、受給者の医療を受ける権利、生命を脅かすものであります。また、毎月の受診回数を制限することや、後発医薬品の服用を原則化すること等も盛り込まれており、医師、歯科医師の裁量権を侵害することにもなります。憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するうえからも、決して許容できるものではありません。


  TPP参加は、日本の医療制度を崩壊させてしまう危険を有しています。アメリカは、混合診療、自由価格、営利病院の承認等を要求しています。故に、国民皆保険制度を守るとはいうものの、待っているものは有名無実で形骸化した皆保険だけです。困窮する人々に直に接する者として、参加に断固反対するものであります。また、「食の安全」についても、参加国から規制緩和を迫られる状況にあり、遺伝子組み換え食品や食品添加物および農薬の表示等に、政府の対応が注目されます。


  福島第一原発事故以後、その対応が弥縫策に終始せざるを得ない現実は、原発に依拠しない世界の正当性を明白にしています。放射能の人体への被害は今後さらに深刻さを増し、グローバルに「福島被害」と呼称されるでしょう。


  「共通番号法案」が今国会で成立しました。個人情報を一元的に管理する仕組みをつくるものであり、医療給付の制限や情報漏洩に留意すべき内容です。


 政府は消費税の段階的引き上げの構えであります。消費税増税は医療機関の概算年間8,000億円の消費税「損税」を増やし、青息吐息の医業経営をさらに圧迫するものです。非課税事業であっても仕入れ税額控除ができる、「ゼロ税率」の実現を望むものであります。


  針の先端のような光明でも見えれば、トンネルがいかに長くても、人は歩き続けることができます。平和と民主主義が存在しなければそこは漆黒の闇と化し、充実した医療・社会保障などとは全く縁がなくなるのです。


  このような現状に対し、岩手県保険医協会は、すべての国民が安心して生活できる平和な社会を築いていくため、医療人としての尊厳を賭して、一層の努力をしていく所存であります。



 第36回定期総会にあたり、この決意を表明するものであります。

2013年6月9日
第36回岩手県保険医協会定期総会

橋下徹氏の発言に抗議する抗議声明

 5月13日、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は旧日本軍の従軍慰安婦問題について、「当時は軍の規律を維持するために必要だった」と発言し、その後、内外から批判を受けていることに関し、「慰安婦を容認したことはない。大誤報をやられた」とメディア批判をしました。

 橋下氏は上記発言以外にも、在日米軍に風俗業の活用も求めており、公職者によるこれらの一連の発言は、女性だけでなく男性の基本的人権を無視し、旧日本軍による組織的な性暴力と性奴隷制を公然と肯定し、女性を軍隊の性の道具とみなす重大な発言であり、米軍犯罪・性暴力に対する擁護にまでつながります。女性の権利、尊厳を守るためにも、橋下氏の暴言を断じて許すわけにはいきません。

 橋下氏は自身の発言が批判を受けるとメディアを批判し正式な記者会見以外の取材を拒否しました。さらには、「日本人は読解力不足」とするなど、開き直りととらえられる態度を示し、政治的立場にある者とは思えない幼稚な振る舞いと、立場をわきまえず発言を繰り返す橋下氏の人間性を疑います。

 岩手県保険医協会は開業医宣言において、過去の戦争の過ちを教訓として学ぶとともに、平和を脅かすあらゆる動きに対し、医師の社会的責任を果たす決意をしています。また、従軍慰安婦は異常な状況の戦時下で生まれたことから、私たちは健康と命を守る医療人として、いかなる戦争も許さず平和を守り、未来永劫、従軍慰安婦のような悲劇を二度と起こさないためにも、橋下氏の発言に抗議します。

 

2013年5月21日

岩手県保険医協会 常任理事会

橋下徹氏の発言に抗議する抗議声明(PDF形式)

 

TPP交渉参加の意向表明に抗議する抗議声明

 2月22日、安倍晋三首相は「日米首脳会談で、聖域なき関税撤廃が前提でないことが明らかになった」として、TPP(環太平洋連携協定)の交渉参加に踏み出す意向を表明し、政府の専権事項として早い段階で決断するとしました。

 私たち岩手県保険医協会(岩手県内の医師・歯科医師約1,000名で構成)は、県民の医療と健康を守るという目的で活動しており、「いつでもどこでも誰でも」医療を受けられる国民皆保険制度を守る立場から、TPP交渉参加の意向表明に抗議するとともに、改めてTPP交渉参加を断念するよう強く求めるものです。

 

 日米首脳会談後に発表された共同声明は、冒頭で、「日本が交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12日にTPP首脳によって表明された『TPPの輪郭(アウトライン)』において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する」としましたが、「TPPのアウトライン」では、「関税と非関税障壁の撤廃が原則」と明記しています。つまり、「聖域」など存在しない旨を確認したことにすぎません。 その上で、「最終的な結果は交渉の中で決まっていく」ことから、「交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することを予め約束することを求められるものではないことを確認する」としています。つまり、交渉参加にあたって、「全ての関税を撤廃することが条件」にはならないが、一方「例外」品目が認められることについて、何の保証もされていないというものです。

 

 自民党が政権公約に掲げた「TPP交渉への参加については、聖域なき関税撤廃を前提にする限り反対」ということにおいて、国民が関心を寄せている点は、農業・食の安全、公的医療保険など経済・生活に大きな影響のある項目を「聖域」として関税撤廃の対象から外せるかどうかにあり、この共同声明は、全ては交渉次第であるとして、対象からの除外を確約しているものではありません。安倍首相の参加意向の表明は、国民の関心・声に応えるものとは到底いえないものです。

 

 医療分野において、これまでも米国は、薬価決定過程への外資企業参加、新薬の特許保護期間の延長など薬価の更なる引き上げにつながる改革、外国事業者を含む営利企業による病院経営など、国民皆保険の形骸化に至るような制度「改正」を要求してきています。医療や国民生活に大きな影響を与えるTPP交渉参加は断じて許されるものではありません。

 引き続き当会は、県民の命と健康及び生活を守るという立場から、広範な市民・団体と連携を深め、TPP交渉参加の阻止に向けて全力を尽くすものです。

 尚、本日付けで「国民皆保険制度を崩壊へ導くTPP参加断念を強く求める緊急要請」を県選出国会議員宛に送付致しました。

 

2013年2月27日

岩手県保険医協会
会長 箱石 勝見

TPP交渉参加の意向表明に抗議する抗議声明(PDF形式)

 

北朝鮮の核実験に抗議する抗議声明

 朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)は2月12日、周辺諸国の人々の懸念を無視し、2006年10月、2009年5月に続いて三回目の核実験を強行した。 我々、岩手県保険医協会は、国民の命と健康を守る医師・歯科医師の立場から、人間の生命と健康を脅かす今回の核実験に対し、強い憤りを覚えている。

 日本は広島、長崎の悲劇を体験し、2011.3.11東日本大震災の福島第一原発事故で、現代の科学力では、核エネルギーが制御不能であることを改めて思い知らされた。また、核実験は、世界中の「核兵器のない世界」への動きに逆行するもので、核兵器の拡散を助長し、世界および北東アジア地域の平和と安全を脅かすものであり、断じて許すことはできない。

 岩手県保険医協会は、今回の北朝鮮による核実験に強く抗議し、今後、世界各国が、一切の核実験を行わないことを望むものである。

 

2013年2月18日

岩手県保険医協会
会長 箱石 勝見

北朝鮮の核実験に抗議する抗議声明(PDF形式)

 

第35回定期総会アピール

 春はきっと来ると信じても、夜は必ず明けると思っても、昨今の日本を覆う閉塞感は傲然と居座ったままです。民主主義のいわば骨法を等閑に付し、時代の大きな潮流よりも細部に拘泥する政争は、政治システムの崩壊を招いています。富は、一部の企業のみに偏在し、一般の国民には無縁です。失政による格差は、合理的なものとは異なり、政治空間の共有性を奪い、健全な対立を損なっています。その結果として、民主主義の前提である一体性が脆弱になり、民主主義そのものが機能不全に陥っているといわれています。

 

 さて、2011年度の本協会の活動は、昨年3月の東日本大震災による被災からの医療関連の復旧・復興を中心としたものになりました。特に、被災された方々の医療費窓口負担免除やその延長、診療中断を余儀なくされた医療機関の早期再開への支援を、国・県・政党等に繰り返し要請して参りました。

 被災11ケ月後の会員アンケートによると、「移転場所の確保」や「二重債務による財政圧迫」等の問題から、本格的診療所再建は道半ばの状態です。運転資金の入手にも厳しさを訴えており、経営的にも焦慮の色を隠せない状況です。被災地以外の受診行動も決して安閑としたものではなく、「間引き服用の増加」とか「受診控えがある」という回答にみられるように、窓口の高負担が県民の健康・生命を脅かしています。

 

 このような実状を慮ると、まず、先進諸国に比べ高い窓口負担を引き下げるとともに、民主党が政権公約としたように日本の医療費をOECD平均まで引き上げるべきです。また、「社会保障と税の一体改革」と称して実現を図る消費税増税は、医療機関のみならず中小企業の経営を今以上に圧迫することは必至です。国家予算の不足財源は他に求めてこそ、世論を尊重することになるのではないでしょうか。

 

 原発の再稼働問題は、電力不足がエネルギー供給問題、ひいては経済に直結してはいるものの、事故の再発を思う時、国民の生命と生活への影響が余りにも深刻であり、大きな岐路に立たされています。一次産業や国民皆保険制度を壊滅に導くと危惧されるTPP(環太平洋経済連携協定)は、日米間の他の問題に視点が移り、目下棚上げ状態です。これを奇貨に、一層の参加阻止運動を展開しなければなりません。

 

 今次改定された国税通則法は、税務調査の際の行政の権限を大幅に拡大するものであり、会計士・税理士等の税の専門家も、納税者の義務のみが一方的に強化されたと、警戒感を抱いています。それに対し、多くの国民の要求する「納税者の権利憲章」の制定は、国からは一顧だにされませんでした。

 

 日常の医療活動に不可避となった電子レセプトは、本年からは縦覧点検・突合点検開始という画期的な局面を迎えました。山積する医療問題を放置したままで、新たな負担を間断なく押しつけてくる国の姿勢は、決して容認できるものではありません。指導・監査問題と併せて、保団連共々今後も精力的に取り組んでいくべき課題です。

 

 種々の問題を列挙する時、われわれは個々人の非力さを痛感してしまいがちです。しかし、問題解決に度々難渋してしまうのは、民主主義の弱体化、すなわち政府の提供する情報の不足が原因となっているのではないでしょうか。判断する材料が隠蔽されると、自分達が何を追求すべきか、何処に進むべきか、いたずらに悩まされてしまうのです。情報開示を得た上で、「人は自分に可能なものしか、本当には欲しない」(デカルト)という思考によった見切りが、打開のための力の源泉となるのではありますまいか。

 

 このような現状を踏まえ、岩手県保険医協会は、多くの人々や団体と手を携えて、安心して生活ができる平和な社会を築いていくために、引き続き尽力を惜しまない所存であります。



 第35回定期総会にあたり、この決意を表明するものであります。

2012年6月10日
第35回岩手県保険医協会定期総会

TPP特区常任理事会声明


 日本の医療の市場化・営利化、国民皆保険制度の崩壊を招く恐れのある、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」への参加と「総合特区法案」に強く反対します。


 岩手県保険医協会は、「TPPへの参加」と「総合特区法案」が、日本の医療・介護に一層の市場化・営利化をもたらし、国民の命と安全を50年にわたり守ってきた国民皆保険制度の崩壊を招くのではないかと危惧しております。国民皆保険制度を堅持し、これ以上の地域医療崩壊を招くことのないよう強く求めるものです。


TPP特区常任理事会声明(PDF形式)

 

2011年2月15日
岩手県保険医協会常任理事会

第29回芸術展受賞作品

 11月6、7日、盛岡市の中央公民館で第29回保険医芸術展を開催しました。今年は絵画や写真、パッチワークや友禅帯など、42点の作品を展示しました。紅葉の見ごろと重なり、過去最高の655人の方に来場いただきました。
来場者の方の投票で決まった受賞作品は以下の通りです。

第29回 保険医芸術展受賞作品
保険医協会会長賞 No1 「春の裏岩手」(絵画) 熊谷達央氏
保険医芸術展賞 No17 「2010『出会い』」(写真) 横澤昭平氏
実行委員長賞 No11 「墨彩画 風影」 佐藤喜久子氏
No6 「河原毛地獄 深夜」(絵画) 岩井利男氏
No9 「スイス・アルプス≠ヨの旅」(絵画) 千田英夫氏
※作品名をクリックすると作品をご覧になれます

第33回定期総会アピール

 人間の尊厳が、精神的価値を無視し物質的価値のみの尺度で論じられる現代の様相は、極端な経済優先ないしは拝金主義の産物であります。そこでは道徳も倫理も等閑に付され、弱き者に対して冷たく厳しい風が吹いても、世の中は平然として恥じる事がありません。このような風潮に、私達は、戦慄し怒りを覚えるとともに、敢然と挑戦することが使命と考えるものであります。

 

  さて、先の総選挙は、非正規労働者が正規労働者の半数に達し、年収200万円未満の給与所得者が1,000万人超となり、生活保護受給者が急増するというさなかに行われ、民主党が大勝し、自公政権が退陣しました。しかし、すぐにも撤廃すると見做されていた後期高齢者医療制度は、4年間かけて廃止し新制度へ移管するとされました。さらには、75歳以上を65歳以上にするという案も検討されているといわれます。この期待に反した措置に、老人だけではなく多くの国民が、落胆し憤っています。

 今回の診療報酬改定は、10年振りのプラス改定とはいえ、全体で実質0.03%の引き上げに留まりました。今までの引き下げ分の7.5%を補填するには程遠い結果となり、「医療費をOECD加盟国の平均まで引き上げる」とする民主党の目標実現には大きな翳りが見えます。また、高度先進医療や救急医療に重点配分する一方で、医科の診療所の再診料が引き下げられ、中小病院や診療所からは、怒りと失望の声が上がりました。歯科は2.09%の引き上げとなりましたが、長期据え置きの技術料の評価は見送られ、これまでのマイナス改定による痛手が甚大で、歯科医療崩壊の趨勢を抑えるには至っていません。

 

 岩手県民の情況も深刻です。2007年においては、年間収入が200万円未満の世帯が25%を超え、相対的貧困率は全国平均の17%に対して23%と、貧困世帯が5世帯に1世帯以上となっています。このような実態は過日の当協会による「受診抑制アンケート」にも反映しています。集計の結果によると、「経済的理由と思われる治療の中断があった」と回答した医療機関は、医科45%、歯科66%であり、中断した疾病は、糖尿病・高血圧・歯周病など長期管理を必要とするものが上位を占めました。また、一時的にしろ窓口で全額支払いを求められる国保資格証明書の交付も増加しています。このように、県民の医療と健康が如実に脅かされています。憲法25条2項に「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とあります。この精神を促進するために、希望する適切な医療を総ての人が享受できる環境作りこそが、私達に課せられた使命であります。


 他方、当協会の推進する「肺炎球菌ワクチンの公費助成を求める請願」や「保険で良い歯科医療の実現を求める請願」を採択する地方議会の数が、着実に伸びています。また、当協会の会員21名も加わり全国の2,000名以上の保険医が原告として闘った「診療報酬レセプトオンライン請求義務化撤回を求める訴訟」は、政府がオンライン義務化を取り下げるという歴史的な成果を挙げることができました。新保険業法により新規普及を停止している保険医休業保障制度は、新保険業法の適用除外の運動と制度保全対策を保団連を中心に進めており、担当大臣もこの自主共済問題に一定の理解を示す展開になっています。


 周知のように、大国の政治指導者の間でも、「核のない世界」が実現性を帯びて語られるようになってきています。このような情勢に私達は如何に処するか。平和を希求してこそ、生存権を求め守ることができ、真の人間の尊厳が開花するのではないでしょうか。


 このような現状に対し、岩手県保険医協会は、多くの人々や団体と手を携えて、安心して生活できる平和な社会を築いていくため、一層の努力をしていく所存であります。

 第33回定期総会にあたり、この決意を表明するものであります。

2010年5月30日
第33回岩手県保険医協会定期総会

第32回定期総会アピール

 資本主義とはいえ、恐慌が不可避という根本的な弱点があるといわれます。今、その弱点が世界を席巻し、日本も市場原理主義の崩壊などの多大な影響を受けています。大企業は、次々に生産体制の縮小を余儀なくされ、下請けや派遣労働者などの非正規労働者が直接の被害を受けました。困窮する彼らに具体的な援助を実行したのは、国や政府というよりは、「年越し派遣村」を設置するなどした民間団体でした。

  さて、後期高齢者医療制度が導入されて1年が経ちました。政府は、世論の強い反発を無視できなくなり、保険料の一部を引き下げ、保険料徴収方法を変更しました。しかし、高齢者の健康増進というよりも医療費抑制であるとの実体はそのままです。当協会は、昨年の6月県議会において他団体と共同で制度の撤回を求める請願の採択を得、また、市長が後期高齢者医療広域連合長を務める盛岡市議会においても、協会単独による制度の撤回を求める請願の採択が実現しました。

  景気の悪化に伴い、国民健康保険の保険料の滞納が県内でも34,000世帯を超えています。長期滞納者が受診を必要とする時は資格証なるものが交付されますが、一時的にしろ10割負担であり、事実上の受診抑制です。自治体の財政悪化があるとしても、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の観点からも、早期に撤回すべき制度です。
  深刻な医師不足は、遂に、4月から県立五地域診療センターの無床化という事態を招きました。地域住民に大きな不安と不満を残しましたが、党派を超え今後も行政とともに取り組んでいかねばならない大きな根深い問題といえます。

  介護保険制度も多くの問題を抱えています。3年ごとの見直しにより、本年4月に簡素化、公平化を名目に要介護度認定方法が改定されました。介護費抑制だけが先行するのではと、現場では内容を疑問視する向きもあり、実施後も実状との乖離に注意を要します。一方では、特別養護老人ホームの待機者は5,000名以上となっており、家族の重い負担は想像に余りあります。介護分野への、国の予算の重点的配分が望まれます。

  レセプトオンライン請求の義務化が足元に迫っていますが、時期尚早という理由で、神奈川県保険医協会を母体に義務化撤回を求める訴訟が起きています。岩手からも21名の会員が原告として名を連ねました。当制度による経費の負担や事務の激変に対応できないため、廃業しか選択肢がないという開業医も少なくありません。国の政策が、医療崩壊を加速しようとしているのです。

  歯科においては、異常な低診療報酬がしばしば国会でも取り上げられていますが、改善の兆しは一向に見えません。一部大新聞の生半可な取材による独善的で扇動的な歯科叩きが横行するのに対し、大手雑誌による歯科界の窮状の特集が年中行事化しています。まさに、歯科医療の質の堅持が危機に瀕しているのです。

  また、ここ一両年の貧困層の大量化、固定化とともに、医療をまともに受けられない人々が増加し、医療に携わるものとして看過できない情況です。それのみか、貧困は戦争への免疫力を低下させ、平和を考え維持するには、戦争放棄の憲法九条と前述の生存権保障の25条は、もはや不可分のものといわれています。それでは、景気の回復が到来しなければ、これらの非合理は克服できないのでしょうか。否、互助の関係性が真の豊かな社会をもたらすと唱える人がいます。

  岩手県保険医協会は、県民の医療と健康を守るため、志を同じくする人々や各団体と協力し、このような情勢の打開に積極的に取り組んでいく所存であります。

  第32回定期総会にあたり、この決意を表明するものであります。

2009年6月7日
第32回岩手県保険医協会定期総会

第27回芸術展受賞作品

 12月5〜8日、テレビ岩手にて「第27回岩手県保険医芸術展」を開催しました。今年は絵画、写真、ちぎり絵の他、書道やパッチワークなど、計53品を展示しました。テレビニュースでの放送や新聞に掲載していただいたこともあり、期間中、来場していただいた方は258名にものぼりました。
 来場者の方の投票で決まった受賞作品は以下の通りです。

第27回 保険医芸術展受賞作品
保険医協会会長賞 No21 「初夏の富良野・美瑛」(写真) 横澤昭平氏
保険医芸術展賞 No01 「水蓮」(油絵) 千田英夫氏
実行委員長賞 No02 「山なし(早池峰山原産)(粘土工芸)
七折の滝(早池峰山麓)(油彩画)」
高橋竜子氏
No04 「水面の彩り」(油絵) 岩井利男氏
※作品名をクリックすると作品をご覧になれます
請願書を提出

岩手県議会渡辺議長に2200億円請願文書を提出

 10月6日に岩手県議会渡辺議長に、民主・県民会議、政和・社民クラブ、共産党 に紹介議員になっていただき、下記のとおり請願書を提出し、同月10日に賛成多数で採択されました。

2200億円請願文書(PDF形式 92KB)

2008年7月 理事会声明

安心安全な生活環境を守るために

青森県六ヶ所村・核燃料再処理工場の稼動の休止を求めます

 2006年3月31日からアクティブ試験を開始し、本年中にも本格稼動への移行を予定している青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場は、大気や海洋中に1日で原発1年分の放射性物質を排出するなど、時代に逆行する形で、深刻な環境破壊、人体への影響などの危険を生じている。国として早急に規制をかけるのはもちろんなのだが、本格稼動により、年間約5トンのプルトニウムを新たに貯蔵することは、核不拡散の立場に反するもので、国際的に批判を招くものであり、全く必要性のないものである。

 

三陸産海産物への影響

 海洋に放出されている放射性物質は、海流にのり、三陸沖へも流れてくる。当然、海の宝庫ともいわれる三陸でとれた海産物にも大きな影響が懸念される。食糧自給率の低下が叫ばれている中、体内被曝の恐れがある国産の海産物を新たに生み出すことは、食の安全という点から見ても、非常に問題がある。

 

イギリス・フランスにおける再処理施設周辺での小児白血病の増加

 実際、イギリスのセラフィールドやフランスのラ・アーグの再処理施設周辺では、英・仏の政府機関が調査した結果、小児白血病が増えたことが明らかとなった。我々は国民の命と健康を守る医師・歯科医師の団体として、未来ある子供たちが命の脅威にさらされていくことを容認することは到底できない。

 

施設の耐震性に対する懸念

 先日、岩手宮城内陸地震があり、自然の恐ろしさをまざまざと見せ付けられたが、六ヶ所再処理工場敷地内と沖合い5キロほどの海底には、100キロを超えると推定される巨大断層が存在する。今回の岩手を震源地とする地震は、そういう断層がないのにも関わらず、これだけの被害だったことを考えると、仮に地震や事故が起きた場合、原発事故を上回る大惨事となることは明白である。1986年のチェルノブイリの大惨事でも明らかなように、事故が起きてからでは、どんなに医学が発達しても、被曝者を救うことは不可能なのである。

 

 我々は、国民の命と健康を守る医師・歯科医師の団体として、安全の確証がない青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場の稼動を早急に休止し、放出している放射性物質や耐震性などの安全性を確認した上で、国民や周辺の県民の意向を受け、操業に慎重な判断をすることを強く求める。

2008年7月16日
岩手県保険医協会理事会

 

第31回定期総会アピール

 日本の来し方を顧みる時、先人に思いが至り少なからぬ感慨を覚えますが、常に順風ということでもありませんでした。度々の危機にも関わらず、それらを克服した故に現在があるのです。内憂により起きたものもあり、外患に因ったものもありましたが、昨今の暗澹たる状況は、為政者の姿勢にも原因があるのではないでしょうか。医療や健康にしても本当の価値を理解しようとしない人に、それらを切望する人の心情が平然と無視されています。

 大きな混乱とともに4月から始まった後期高齢者医療制度に、全国各地の特に年金生活者は怒りの声を上げました。医療費の抑制を目的に、75歳以上の高齢者の年金から強制的に保険料を徴収し、老人の安住の場所を狭めているのです。 医師不足の問題も深刻です。失政に気付いた政府も対策を講じつつありますが、不足の解消には10年以上要すると言われています。また、医療界に導入された市場原理主義は、格差社会を助長しています。翻って、歯科医師過剰は、歯科医療の質的問題と相俟って、患者の全身にも関連する喫緊の課題となっています。

 他方、自衛隊のインド洋からの一時的撤退、自衛隊イラク派遣の高裁による違憲判断といった平和問題を再考させる動きもありましたが、日本政府のチベット人権問題への消極的な姿勢や、米軍基地への常軌を逸した厚遇、さらに青森県六ヵ所の再処理工場放出の海洋放射能汚染、米国産肉牛と中国製冷凍ギョーザに代表される輸入食材等の国民の健康を無視した問題もあります。

 われわれは、これらの諸々の危機的状況に逡巡することなく立ち向かい、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と憲法第25条が謳う理念を信じて、県民の医療を守るという立場で活動してまいりました。
岩手県保険医協会は、生命と健康が尊重される社会を実現するために、またそれに不可欠な平和の保持発展のために、多くの人々や団体と手を携え今後も邁進してまいります。

 第31回定期総会にあたり、この決意を表明するものであります。

2008年6月8日
第31回岩手県保険医協会定期総会

 
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